本日の科学ライブショー「ユニバース」は、亀谷和久(国立天文台)が案内役を務め、ゲストに阿部新助さん(日本大学理工学部航空宇宙工学科)をお迎えしてお送りしました。
最初は「本日の星空」から始まりました。
20時頃に見えるしし座や北斗七星、うしかい座、おとめ座などの春の星座とそれらの一等星や春の大三角を見ました。
その後、時間を0時に進めて東の空から昇ってくるさそり座やこと座、わし座、はくちょう座などの夏の星座や明日満月になる月や木星、天の川を見ました。
次は「太陽系の姿」
です。
地球を飛び出して、太陽系の惑星の姿を1つずつ見ていきました。
さらにそのほかの太陽系の仲間である準惑星や太陽系外縁天体、小惑星について紹介しました。
小惑星は火星と木星の間にたくさん存在していて、小惑星帯を形成しています。さらに火星の内側や地球軌道の近くを通る小惑星もあり、その中でも今特に
注目されている小惑星の一つであるリュウグウに近づいて、その姿を見ました。
そして「宇宙の果てへ」では、太陽系を飛び出して星座を形作る恒星や天の川銀河、さらにその外側の銀河とそれらの銀河が網目状になった宇宙の大規模構造を見て地球に戻ってきました。
「ゲストコーナー」
では、阿部さんに「「はやぶさ2」小惑星探査で何がわかるのか?」と題してお話しいただきました。
「はやぶさ2」による探査によって、小惑星リュウグウの詳細なデータが明らかになってきています。リュウグウはダイヤモンド(そろばんの玉)のような形をしていて、大きさは直径約1㎞、太陽の光を95%も吸収しているため暗くて、表面は100℃にも達します。空隙率(内部にどれだけ隙間があるか)は50%以上と、中身がお寿司のシャリのようにスカスカであることや、自転周期は7.6時間であることなどがわかっています。
自転周期が2〜3時間程度で高速自転する小惑星の多くはダイヤモンド形をしているそうで、その形成には太陽からの熱による自転周期の変化や自転によって生まれる遠心力の大きさが深く関係しています。遠心力は自転の速さが速いほど大きくなり、小惑星の表面の物質が遠心力の大きな赤道付近に移動し、脱出速度を超えて宇宙に飛ばされます。その結果、赤道付近が膨らんだダイヤモンド形状になっていき、剥ぎ取られた物質も再度集まってやがて衛星となります。このようなプロセスで、地球接近小惑星の6つに1つが衛星を持つという観測結果を説明できることが分かってきました。
リュウグウは人類初となる小惑星ローバー、ミネルバ-Ⅱ1A、1B(イブー、アウル)による探査が実施され、得られた画像で表面に数cmの大きさの石がある様子がわかりました。
またタッチダウン前後の画像をつなげたムービーでは、リュウグウにタッチするだけで表面の砂が舞い上がる様子が見られました。
さらに、リュウグウ表面に人工クレーターを作りました。小惑星の表面は太陽風や微小隕石衝突や宇宙線などによって性質が変性を受けているため、表面を調べるだけではリュウグウの本来の姿はわかりません。しかし、クレーターを作ることでリュウグウの表層下にある物質を調べることができます。このクレーターを作った後の画像では、表面にあった石が周りに吹き飛んでさらに小さなクレーターを作っている様子や、埋まっていた石が表面に出てきている様子を見ることができました(物質の変化などは現在計測中)。
リュウグウの赤外線分光スペクトルからは、リュウグウに水(OH基=水酸基)があることがわかりました。一方、「はやぶさ」初号機が地球に持ち帰った小惑星イトカワのサンプル分析からは、イトカワにも水が含まれ、地球の海の成分に一致するという驚くべき結果が最近得られています。
これまで、地球の水の起源は彗星であると考えられていました。しかし、水(H2O)に含まれる水素と重水素(水素同位体、重さの違う水素)の比率を調べたところ、地球と彗星ではその比率が異なる一方、小惑星起源の隕石に含まれる水素と重水素の比率は、地球の海とほぼ同じであるということが分かっています。さらに、地球の軌道と交差する軌道を持つ小惑星がたくさん存在していて、1メートルサイズの小惑星は、3日に一度の割合で地球大気に突入しています。これらのことから、「地球の水の起源は小惑星ではないか」という説が有力であると考えられています。
探査機「はやぶさ2」の地球帰還は2020年末を予定しています。帰還が待ち遠しいですね!
科学ライブショー「ユニバース」では毎週様々なゲストをお招きして科学の話題をお送りしています。
ぜひ科学技術館4階シンラドームへお越しください。