CD「UNIVERSE」推薦文

以下は、科学ライブショー「ユニバース」の"案内役"を勤める理化学研究所戎崎計算宇宙物理研究室主任研究員の戎崎俊一(理学博士)による推薦文です。

このCDに収められた一連の曲は、北の丸公園、科学技術館4階ユニバースにおける科学ライブショーでの使用のために特別に作曲された。このライブショーでは、コンピューターによって合成された映像を400インチの大スクリーンに投影し、太陽系の姿や、銀河衝突、重力レンズなどの現象について現役の研究者("案内役"と呼ぶ)自らが、観客の前に立って説明する。1996年に行われた科学技術館更新プロジェクトにおいて、筆者自ら提案し毎週土曜日にほとんど休みなく続けてきた。
コンピュータグラフィックスは三次元モデルを元にして実時間で合成されるため、"案内役"の指示によりコンピュータ操作担当の"アシスタント"の操作で、その場で自由自在に視点を動かすことができる。これにより、動態視差による立体感が生まれ、高い臨場感が得られるとともに、三次元的な複雑な形状を直感的に観客が認識できる。
バックグランドミュージックは、観客の情感を高め、その感動をいやましに深める。しかし、その効果は、サイエンスビジュアリゼーションの分野では軽視しされ勝ちである。たいていの場合は音楽なし、もしくは何の関係のないクラシック音楽を漫然と流す場合が多いのは残念である。
近藤氏は友人の紹介で、ユニバースライブショーの活動を知り、見学に来られた。それは、スタート時に作った音楽も次第に色あせてきたちょうどそのときだったので、その更新をお願いした。できてきたのがこの一連の曲である。映像も感じを良く捉えその効果を何層倍にもするすばらしいできで、とてもうれしかった のを覚えている。また、ライブショー中に、ライブで演奏してもらった。するとさらに一層気持ちが良い!!というユニバースのスタッフの一同の感動が実り今回のCD製作となった。
ルネッサンス、近代科学の揺籃期では、科学と芸術は一体のものであった。その後、両者は不幸にして分かれてしまったが、コンピュータという便利な道具の登場で再び融合しつつある。人間がごちゃごちゃ想像してつくった映像もよいが、自然界の法則にしたがって作られた映像は、自然で、見てて疲れず、迫力があり、美しい。それに、人間の心の動きに合わせた音楽がかぶさると、より一層の感動が得られることを私たちは知っている。今後も、科学と芸術が融合した新しい活動を展開していきたいと考えている。