10月27日「ノーベル賞特別講演会」@科学技術館

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本日は、先週の山中慎也教授の研究に対するノーベル生理学・医学賞に
引き続き、今年度のノーベル物理学賞と化学賞についての話題を、その
専門の講演者にお越し頂き、科学ライブショー『ユニバース』の時間を使い、
ノーベル賞特別講演会をお送りいたしました。
 まず第一部は、物理学賞の話題について「量子のへんてこな世界を
操作する」と題しまして、講演者に蔡兆申先生(理化学研究所)をお迎え
して、お送りいたしました。
2012年のノーベル物理学賞はフランスのセルジュ・ハロシュ博士、米国の
デービット・ワインランド博士が受賞しました。これは、「単独の量子系の
操作」が評価されたものであるということです。難しい印象を受けますが、
代表的なレーザーの仕組み・原理を教えていただき、それを踏まえ、
蔡先生にハロシュ氏・ワインランド氏の研究のそれぞれについて簡略図を
用いてわかりやすく説明していただきました。
さらに「量子性」とは粒子性と波動性を兼ね備えた性質であることや、今回の
研究を理解するための基本的な知識について解説いただきました。また、
人間の目では見えないことをオセロを使ったモデルで表したり、
シュレディンガーのねこの仮想実験についてイラストで示したりして、量子の
世界を人間の世界で表してみるとどうなるかといった難しい内容をわかり
やすく解説していただきました。単独の量子系の操作ができると、その先には
量子コンピューターの実用化があり、いままでよりも高速な計算が可能になる
と考えられています。
次に第二部「2012年度ノーベル化学賞にGPDRの研究―GPCRって何、
なんで化学賞、コビルカさん・ラフコビッツさんは何をした」と題しまして、
講演者に青山学院大学の宮野雅司さんに お越しいただき、お送りしました。
まず、GPCRとはGタンパク質共役受容体であり、私たちが目で“モノ”を
見る光の例から始まり、細胞外の神経伝達物質やホルモンを受容してその
シグナルを細胞内に伝えるものです。花粉症で溢れる涙や鼻水を抑える薬から、
ぜんそく発作を抑える薬など多くの薬が、このGPCRに働いているので、
これまでもこれからも、薬を通して私たちの日常生活から命にまで関わる
非常に身近なものであることをご紹介いただきました。また、GPCRの
研究にまつわる歴史を示し、今回のノーベル賞受賞も長い期間の研究の積み
重ねの上にあることがわかりました。今回話題になった研究はGPCRの
結晶を作り、その構造を明らかにしたものであり、どうやって明らかにしたのか
についての手順も、視覚的にわかりやすく説明していただきました。
コビルカ博士が研究している建物、その場所の雰囲気、研究に携わった人物、
研究の機材などを写真で大きく示し、お客さんにご覧いただきました。
ノーベル賞というと遠い世界のように思ってしまいますが、研究者が作業
している場面をご覧いただくことにより、身近に感じていただけたと思います。
この写真から、日本にはない、ノーベル賞を受賞した下村脩博士同様、
アメリカの研究者の一つの典型として、 家族ぐるみで研究に取り組む、
ということが行われていること、研究では一つひとつの作業をしっかりと
行っていることを読み取ることができました。