3月16日@科学技術館

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冬の厳しい寒さから観測史上最速の夏日、さらに、春の嵐に大規模な
煙霧まで味わった1週間でしたね。本日の「ユニバース」は大朝由美子
(埼玉大学)が案内役を務め、松本尚子さん(国立天文台 水沢VLBI観測所)を
ゲストにお招きしてお送りしました。
本日は開演時間の空からスタート、時間を進め日没を迎えます。
日没直後、午後6時10分ごろの西から西北西にかけて、地面からこぶし
半分ぐらいの高さには、3月10日に太陽に最接近したパンスターズ彗星が
見えます。ハワイにある望遠鏡の名前が付けられました。この彗星は
日本では高い建物や山が見えないひらけた場所で見ることができます。
高層ビルの多い東京都心でもいくつか観測例があるようです。是非
試してみてください。
地上から星を眺めた後は、宇宙に飛び出してみました。太陽系のさらに遠く、
ずーっと遠くに行くと、やがて天の川銀河の外に出ます。本日の「ゲスト
コーナー」
は、この天の川銀河のお話。「良い視力で天の川の地図作りを
始めたら・・・」と題して松本さんにお話を聴きました。
松本さんは銀河系の3次元地図作成プロジェクト、VERA (VLBI Exploration
of Radio Astrometry, 天文広域精測望遠鏡)に携わっています。VERAは
ラテン語では「真実」を意味するそうです。観測は石垣島(沖縄県)、入来
(鹿児島県)、小笠原(東京都)、水沢(岩手県)の計4か所にある直径20mの
電波望遠鏡を用い、VLBI (Very Long BaselineInterferometry:超長基線
干渉計)と呼ばれる観測を行ないます。これらの望遠鏡を組み合わせた観測では、
直径2,300kmの望遠鏡と同じ視力を持ち、
それは地球から月にある1円玉を
見分けることができるほどの視力だそうです。この視力によって観測するのは、
天の川銀河内にあるメーザー(レーザーの電波版)と呼ばれる強い電波を出す
天体です。地球の公転によって、メーザーは見かけ、楕円を描くように動いて
見えます。この楕円の大きさを精度良く測定することで、メーザーまでの距離を、
また、楕円の中心の直線運動も捉えることで、メーザーの実際の運動の速さと
方向を求めます。さらに、ドップラー効果でメーザーの奥行き方向の速さも
測定することで、3次元運動がわかります。この観測によって、太陽系から
天の川銀河の中心までおよそ26100光年の距離があり、太陽系は天の川銀河内を
秒速240kmで公転していることがわかりました。今までの観測から考えられて
いたよりも、天の川銀河の中心は近く、太陽系は速く動いているそうです。
これらの結果から、天の川銀河の重さは今まで考えられていた重さより
20%ほど重いと予想されています。
最後はVERAによって新たな発見のあった、私たちのいる天の川銀河を離れ、
遙か遠く宇宙の果てまで日帰り旅行しました。
科学ライブショー「ユニバース」では、天文学を始め、化学、物理学、
機械工学など最新の科学・技術の話題を 毎週お届けしています。
科学技術館・シンラドームでみなさんにお会いできることを心待ちに
しております。