本日は、先日発表された、ノーベル化学・物理学賞についての特別講演を、案内役の大朝由美子先生(埼玉大学)と共にお送りしました。
1回目の公演は河野行雄先生(理化学研究所)をお招きし、ノーベル物理学賞を受賞しました、「二次元物質グラフェンに関する先駆的実験」についてお話いただきました。
グラフェンとは、炭素を六角形で結合させ、それを敷き詰めたもので、これが何層も重ねれば鉛筆(黒鉛)となります。
さて、パソコンなどの電子機器で、よく処理が速いものがいいといわれますが、この処理の速さは内部で行き交う電子のスピードが速いことと同義です。つまり、電子が速くなれば、
より高速処理が可能になります。電子は、三次元空間より二次元平面の方が動きやすいので、より速く電子を動かすには二次元に近い媒体を作らなければいけません。
そして、出来たのが、このグラフェンです。グラフェンの厚さは炭素原子1個分なので、限りなく二次元に近いといえます。
この「二次元」という性質が電子の高速制御をなし、ケータイやパソコン、太陽電池、医療などの更なる発展に結びつくのです。
また、このグラフェン内を走る電子は光速に近く、相対性理論から「質量は0」に近づくとされています。この質量0の状態を使うと、相対性理論や量子論の興味深い実験が行えるようになります。
このグラフェンを使い、まだ解明されていない物理の謎を解き明かせるかもしれません。
2回目の公演は、山田陽一先生(理化学研究所)をお招きし、ノーベル化学賞を受賞しました、「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」についてお話いただきました。
クロスカップリングとは、高校の化学でお馴染みのベンゼン環にちなむものです。結合している物質が異なる二つのベンゼン環を結合させるものなのですが、
これは1970年代ではとても難しいものでした。1971年にパラジウム触媒でカップリング反応が成功したことを皮切りに、多くの実験と理論が積み重なってやっと今回の鈴木先生、
根岸先生の方法が発見されました。お二方の発見された方法は工業用としてもなりえるので、大変多くのことに使われています。
特に高血圧治療薬は、この方法がないと製造出来ません。
また、テレビ等の液晶の製造も1工程で済むようになり、現在日本の得意分野となっています。
このように、このパラジウムを使ったクロスカップリングは私たちの生活に多くの点で関わっていて、もはやなくてはならないものとなっています。
資源の少ない日本だからこそ、画期的、飛躍的な研究や技術が生まれていくのかもしれません。
今後も日本人のノーベル賞受賞者が出てくることを期待していきましょう。
10月16日@科学技術館 ノーベル賞特別講演会
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