10月11日@科学技術館(ノーベル賞特番)

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本日の科学ライブショー「ユニバース」はノーベル物理学賞特番も上演しました。
今年度のノーベル物理学賞は赤﨑さん、天野さん、中村さんのお三方が青色発光
ダイオードの実現で受賞されましたね。そんなホットな発光ダイオードのお話です。
ノーベル賞特番の案内役は亀谷和久(東京理科大学)が務め、定昌史(じょうまさふみ)さん
(理化学研究所)をお招きし「LEDの光が導くこと」と題してお話しいただきました。
前半では今年度の物理学賞の受賞内容について、後半では発光ダイオードの最先端
研究について解説していただきました。
まず、受賞内容についてです。信号機や液晶画面、イルミネーションなど私たちの
身近なところで使われている青色発光ダイオード。本受賞における評価ポイントは
「明るく省エネルギーな白色光を可能にした効率的な青色発光ダイオードの実現」
でした。キーワードは「白色光」「発光ダイオード」の2つです。
「白色光」は赤・青・緑のいわゆる光の3原色を混ぜたときに生じます。つまり、
この3原色を発光ダイオードで再現することが白色光を発するための絶対条件と
いえます。発光ダイオードは、一言でいえば、電気を光に変える素子で、英語で
Light-Emitting Diodeと言います(以下、LEDと表記)。LEDは半導体を用い、
半導体光源の一種です。半導体とは、金属と絶縁体(ゴムなど、電気を全く
通さないもの)の中間的な性質を持つ物質のことで、p型半導体とn型半導体の
2種類に分類されます。このp型とn型を接続し、電気を流すと光が発生します。
これが発光ダイオードの正体です。この光の色は、半導体がどの物質からできて
いるかによって変わります。LEDの研究の歴史は古く、赤・緑は1960年代に発明
されました。それに対し3氏が青を完成させたのは1990年代と、青色の発明は
格段に難しいものでした。本講演では、青の発色を可能にした技術について
解説していただきました。開発に成功した鍵は「青の発色をもたらす半導体」、
「きれいな半導体結晶の製作」、「p型及びn型半導体の実現」の3点です。
青の発色は窒化ガリウム(GaN)を用いることでできることがわかりました。
GaNはきれいな半導体結晶を作るのが難しかったのですが、サファイア基板に
低温バッファ層を設けて、その上にGaNの結晶を成長させることできれいな
結晶を作ることに成功したそうです。難しいとされていたp型半導体の実現には
電子線アニールや窒素アニールという、いずれも半導体内の水素原子を
追い出す方法を確立しました。そして、このGaNの半導体を大量生産するため、
ツーフロー成長法という原料をより効率的に基板に成長させる方法が考案
されました。こんな長い道のりを経て、私たちが身近に使っている青色発光
ダイオードは開発されました。
次に、LEDの最先端研究についてです。今回話題となったのは青色LEDの開発です。
現在存在するLEDは赤、緑、青といういわゆる可視光の範囲のものです。しかし、
実際には可視光のほかに紫外線や赤外線がありますね。殺菌消毒や浄水・空気清浄に
用いられる紫外線。現在紫外線発光に用いられるのは水銀ランプです。発熱量が著しく、
電気の光変換効率がとても悪いという問題があります。紫外線発光にもLEDが存在
したら、省エネルギーで効率のよい世界になることが期待されます。そんな紫外線
LEDの研究を行っているのが講演していただいた定さんです。赤より緑、緑より青、
青より紫外線と、より短波長になる程半導体を作るのは難しくなるそうです。定さんの
研究室では原子レベルの構造設計で立ち向かい、MOCVD(有機金属気相成長)を
用いることにより、220-350nmの波長の紫外線LEDを実現することに成功しました。
紫外線LEDが実用化する日が近いと思うとわくわくしますね!
また、私たちが現在用いている光源はいずれも「光」を対象としています。しかし、
実は「光」とは「光子」と呼ばれる粒の集まりなのをご存じですか?現在では光子
1つ1つを操ることは難しく、光というひとまとまりの存在として扱っています。
近い将来、この光子1つ1つを操り意味づけを行うことができるかもしれないそうです。
半導体光源に量子ドットという40nm程の構造を作成することで、光子を1つ1つ
打ち出すことができるようになります。もし、この光子1つ1つに役割を与えられるなら、
光を用いた従来の方法より格段に小さいスケールでデータを扱うことが可能となります。
これにより今後データ送信法が大きく変わるかもしれないと思うと更なる研究成果が
楽しみですね!気になる方は「量子暗号」「量子テレポーション」について調べて
みてください。
青色LEDの発明に続き、紫外線LEDの実用化も近い現在。これから先の未来、LEDが
私たちの世界に更なる変革をもたらしてくれることでしょう。そんな「LEDの光が
導いてくれる素敵な未来」に皆さんも思いをはせてみませんか?