2016年2月12日、時空のさざ波「重力波」がアメリカのレーザー干渉計で初めて
検出され、大きなニュースになりました。
そこで、5月7日の科学ライブショー「ユニバース」では通常上演に加え、
「重力波検出記念特別講演会」と題して、真貝寿明さん(大阪工業大学 情報科学部)を
お招きし、「アインシュタインが予言して100年、ついにとらえた重力波」という
タイトルでご講演いただきました。
重力といえば、ニュートンのりんごの話が有名ですね。
りんごが地球に引っ張られて落ちるように、全ての物質には互いに引っ張り合う
「万有引力」という力がはたらいているとニュートンは考えたのです。
そのおよそ230年後、物理学者アインシュタインは、さらに強い重力の世界では
「万有引力」ではなく、時間と空間が歪んでいることによって物質は重たいものに
引き寄せられるとする「一般相対性理論」を唱えました。
トランポリンの上に重たいボールを置いたときをイメージしてみましょう。もちろん
ボールは沈みますよね。その周りにビー玉を転がすと、沈んでいるボールに
引き寄せられるようにビー玉は転がっていきます。これが重力の正体です。そして
ボールが重たすぎてトランポリンが破けてしまうと、光さえも逃げられない
ブラックホールになります。宇宙にある半分以上の星々は二つの星が互いに
周回している「連星」であると言われています。二つの重いボールがお互いを回れば、
トランポリンに歪みが生じます。その歪みによって引き起こされる波のことを
「重力波」と呼ぶのです。
重い星が宇宙のあちこちに発した「重力波」をとらえればアインシュタインの理論が
正しいことが実証されます。しかし、予言されてから100年間、「重力波」を発見する
ことはできませんでした。
1974年に発見された中性子星の連星によって、重力波の存在が「間接的に」
明らかになり、連星を発見したハルスとテイラーは93年にノーベル物理学賞を
受賞しました。その後、こんどは重力波の「直接検出」への挑戦がはじまりました。
今回、重力波の検出に使用されたのはアメリカのLIGOというレーザー干渉計。
全長4kmの長い経路をレーザー光が往復するパイプを2つ垂直に設置した干渉計が、
ワシントン州の砂漠とルイジアナ州のジャングルの中の二カ所に設置されています。
このトンネルの先には鏡がついており、中央からレーザーを当てて跳ね返ってきた
光の強弱によって、重力波がぶつかったかどうかがわかる、という仕組みになっています。
今回検出された重力波は、太陽の29倍と36倍質量をもつブラックホールが衝突・合体
したということがわかりました。合体してできたのは、太陽の62倍の質量をもつ大きな
ブラックホール。あれ、計算が合わない…?実は太陽の質量3倍分はエネルギーとして
放出されたのです。このエネルギーをもつ重力波が地球上で微弱な波としてとらえた
ことによって、ブラックホールの衝突・合体は、おおよそ13億光年先で起きたということも
わかりました。
重力波が見つかったこと、それはアインシュタインの考えが正しかったということ。
100年経ってようやく証明されたので、アインシュタインもずっと待っていたことでしょう。
これからさらに重力波の検出がなされることで新しい研究分野が発展し、今まで
わからなかった宇宙の謎が、次第に明らかにされてゆくかもしれません。
今後の研究に期待しましょう。
なお、今回のご講演に使用されたスライドは真貝さんの研究室のページでも
公開されていますのでご参照ください。
「アインシュタインが予言して100年、ついにとらえた重力波」
重力波検出記念特別講演会@科学技術館
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