本日の科学ライブショー「ユニバース」は、伊藤哲也(国立天文台)が案内役を務め、ゲストに高取沙悠理さん(総合研究大学院大学/高エネルギー加速器研究機構)をお迎えしてお送りしました。
今日は「本日の星空」のコーナーから始まり、夜20時に見える星空を見ていきました。
西の空に輝くオリオン座やおうし座、ふたご座、おおいぬ座、こいぬ座などの冬の星座と一等星や、南と東の空のしし座やおとめ座、かに座などの春の星座、北の空の北斗七星と北極星、さらに火星や月が見えました。
次は宇宙へ飛び出して「太陽系の姿」のコーナーへ。
太陽系の惑星や、2月22日に小惑星リュウグウにタッチダウンしたはやぶさ2のミッションについて紹介しました。
さらに、はやぶさ2は4月5日にリュウグウに人工クレーターを作るため、銅のかたまりを打ち込みました。その結果は再来週あたりにわかるそうです。
今度は太陽系を飛び出して「宇宙の果てへ」。
私たちが暮らす天の川銀河や、たくさんの銀河を見ていきました。
特に注目したのは、おとめ座銀河団のうちの一つであるM87です。
おととい「史上初のブラックホールの撮像に成功した」ことがニュースになったのをご存知ですか?
これまではブラックホールが存在していることはわかっていましたが、その姿を捉えることはできていませんでした。
しかし今回、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)によって、はじめてM87の中心にあるブラックホールを撮像することに成功しました。
EHTは、8つの電波望遠鏡を組み合わせることで地球サイズの望遠鏡を使った時と同じくらいの分解能で観測をすることができ、その視力は(人間で1.2などで表す数値でいうと)なんと300万もあります。
このプロジェクトには日本人も参加しており、「次は動画を撮りたい」とのことでした。
動画でみたら、ブラックホールの周りの物質が吸い込まれていく様子を見ることができるかもしれませんね。
今後の研究でブラックホールのことがもっとわかってくると良いですね。
さらに宇宙の外側へ進んでいくと、銀河が泡の表面に分布しているような様子や宇宙マイクロ波背景放射のイメージが見えました。
今回の「ゲストコーナー」では、ゲストの高取さんに「宇宙のはじまりをみる」と題してこの宇宙マイクロ波背景放射のに関する研究についてお話しいただきました。
宇宙は約138億年前に誕生したといわれていますが、どのように誕生したか、誕生してすぐはどんな様子だったかの詳細はまだ分かっていません。
高取さんは観測することができる宇宙最古の光である宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwaves Microwave Background,CMB)を使って、宇宙のはじまりについて研究をしています。
1965年、はじめてCMBが発見され、宇宙の温度がわかりました。さらに、そのあとに打ち上げられたCOBE衛星や、WMAP衛星、Planck衛星によって、CMBの温度に10万分の1の揺らぎがあることや宇宙の詳細な年齢などがわかってきました。
高取さんは「POLARBEAR実験」という国際プロジェクトの一員として活躍しています。このプロジェクトは、POLARBEAR望遠鏡という高さおよそ5mの電波望遠鏡を使って進められています。POLARBEAR望遠鏡はチリのアタカマ砂漠にあり、標高5200mの乾燥した場所で観測をしています。マイクロ波は地球身近ではwi-fiや電子レンジなどに使われていますが、水に吸収される性質があります。このため、大気が薄く乾燥しているこの場所で観測しています。
また、POLARBEAR望遠鏡は空をスキャンしながら観測します。
現在、POLARBEAR望遠鏡には新型受信機システムの取り付けが進められています。CMBの電波はおよそ-270℃に冷却された受信機内の3枚のアルミナのレンズを通って焦点面に入ります。この焦点面装置は7588個の検出器からなってCMBの偏光を観測することができます。その感度は1秒の観測で0.000005℃の温度を見分けることができるそうです。このアップグレードにより、感度は従来の10倍以上となり、2019年夏から稼働予定だそうです。
40年ほど前、日本の宇宙物理学者の佐藤勝彦さんやアラン・グースさんが、ビッグバンの直前に宇宙が急激に膨張したという「インフレーション理論」を提唱しました。この説の決定的な証拠はまだ見つかっておらず、POLARBEAR実験などのCMB偏光観測実験によってインフレーションが起こったことが証明されれば、ノーベル賞をとれるのではないかと言われています。
POLARBEAR実験の今後の研究の成果が楽しみですね。
最後に地球に戻り「国際宇宙ステーション」を見て、本日のライブショーは終了しました。
科学ライブショー「ユニバース」では毎週様々なゲストをお招きして科学の話題をお送りしています。
ぜひ科学技術館4階シンラドームへお越しください。