“実感太陽系”は、「太陽系の姿」及び「恒星間飛行」コーナーの中で、宇宙の広がりの理解を助けるために、天体の大きさや距離を身近なスケールに変え、小さくなった天体を手に乗せたりすぐそこに近付いた惑星まで歩いてみたりすることによって、宇宙の大きさを体感して頂くサブコーナーです。
同様の試みはあちこちの施設や実践で行われていますが、科学ライブショー「ユニバース」においては、各コーナーのシミュレーションと模型や実際に歩くことを組み合わせることによって太陽系の大きさを文字通り”実感”して頂くことに主眼を置いています。
また、会場の建物の外部にも着目し、周囲のランドマークを積極的に活用しています。
一般に太陽系の説明をする際には、惑星の大きさと太陽からの距離を揃えると現実的な展示や画像の大きさでは惑星が小さくなり過ぎてしまい、それぞれの軌道線しか描くことができないため、惑星を拡大して表示することが多くなっています。
しかし、この方法では、太陽系の全体像は分かり易い半面で、各惑星の大きさの比率や太陽からの距離の感覚を感じることは難しくなっています。
ここでは、太陽及び各惑星の大きさと距離の関係をそのまま一律に縮小し、両者を同時に身近なスケールにして考えてみます。
例えば、太陽系を200億分の1(1/20000000000)に縮めてみましょう。
このとき、太陽の赤道直径は約7.0cmで、大体ゴムボールと同じ大きさになります。
同じ縮尺で考えた地球は、直径が約0.64mmとビーズ玉よりも更に小さく、太陽から約7.5m離れたところを回っています。
地球の衛星である月は、直径が約0.17mmで、地球から約1.9cm離れたところにあります。
また、太陽に一番近い惑星である水星は大体2.9mのところを、一番遠い海王星は大体230m離れたところを回っていることになります。
尚、2006年8月24日まで太陽系の惑星に分類されていた冥王星は、平均すると大体300m離れたところを回っていることになります。
因みに、この縮尺では、我々の太陽から一番近い恒星であるケンタウルス座α星(α Cen)は太陽から大体2000km離れた位置にあります。
名称 | 実際の大きさ | 200億分の1 | ||
---|---|---|---|---|
軌道半径(億km) | 半径(km) | 軌道半径(m) | 直径(mm) | |
太陽 | – | 696000 | – | 69.6 |
水星 | 0.579 | 2440 | 2.9 | 0.2 |
金星 | 1.082 | 6052 | 5.4 | 0.6 |
地球 | 1.496 | 6378 | 7.5 | 0.6 |
火星 | 2.279 | 3396 | 11.4 | 0.3 |
木星 | 7.783 | 71492 | 38.9 | 7.1 |
土星 | 14.294 | 60268 | 71.5 | 6.0 |
天王星 | 28.750 | 25559 | 143.8 | 2.6 |
海王星 | 45.044 | 24764 | 225.2 | 2.5 |
(冥王星) | 59.152 近日点 44.422 遠日点 73.881 |
1195 | 295.8 近日点 222.1 遠日点 369.4 |
0.1 |
(出典:国立天文台 編, 『理科年表 2010年版』)
実際には各惑星は楕円軌道を描き、完全な円軌道ではありませんが、このスケールで考えれば正円と考えて差し支えありません。
参考までに、冥王星については、近日点と遠日点を適当なランドマークに合わせて再現すれば良いでしょう。
各惑星がもう少し大きくなるような縮尺を考えることも出来ますが、後述するように実際に太陽から海王星(や冥王星)まで移動することを考えると、計算のし易さも含めてこの200億分の1というのがかなり限定された縮尺になります。
全体がこれより大きくなると外惑星まで歩いて行くには遠過ぎる距離になってしまいますし、反対に小さくなると地球型惑星が小さ過ぎて模型でも表現し切れなくなってしまいます。
一般に太陽系全体を一定の縮尺で描くには、科学館等の中庭全体を利用したり学校等のグラウンドを活用したりするため、広い敷地を持つ施設で実践するか、或いは細々とした模型になるか各惑星の表示比率を変えるかしていることが多いですが、科学ライブショー「ユニバース」では以下のように、周囲の施設や目印を活用することで実践を行っています。
科学技術館ユニバースでは
科学技術館ユニバースにおいては、科学技術館及びその周囲の北の丸公園界隈のランドマークを用いて”実感太陽系”の上演を行っています。
まず、直径約7cmのゴムボールまたは発泡スチロール球を会場である科学技術館4階ユニバースの前方に置き、これを太陽とみなします。
このとき、ビーズ玉よりも小さな水星・金星・地球・火星の各惑星が客席付近までに相当する距離に存在することになります。
木星は館のフロア一杯に半径があるような感じです。
土星以遠については、館からお帰りになる経路をお選び下さい。
尚、約2000km離れたケンタウルス座α星は、樺太や北京(ちょっと手前)や台北(ちょっと手前)辺りにもう一つゴムボールがあるような感じです。
出張ユニバースでは
出張ユニバースにおいても、会場となる科学館やプラネタリウム等にある太陽系縮尺模型をお借りしたり、施設内や周囲のランドマークを活用したりして実感太陽系の上演を行うことがあります。
基本的には科学技術館での上演と変わりませんが、目印に応じて縮尺を変えたり、地元の方が慣れ親しんでいる会場付近の建物を惑星の位置の例に出したりしてお楽しみ頂きます。
過去の出張ユニバースにおいては、
- 東京大学理学系研究科附属天文学教育研究センター (2000年11月11日・2006年10月28日)
- Sony Explora Science 索尼探夢 (2001年6月2-3日)
- 広島市子ども文化科学館 (2001年9月15日)
- 倉敷科学センター (2001年9月16日)
- 和泊中学校あかね文化ホール (2001年9月25日)
- ぐんまこどもの国児童会館 (2002年1月13日)
- 東大和市立郷土博物館 (2002年7月21日)
- かわべ天文公園 (2002年9月15日)
- 関勤労者総合福祉センター アピセ・関 (2003年2月22日)
- 岐阜県先端科学技術体験センター サイエンスワールド(2003年2月23日・2003年11月3日)
- 防府市青少年科学館 ソラール(2003年4月29日)
- 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター (2003年5月5日)
- 多摩六都科学館 (2003年9月13日)
- 盛岡市子ども科学館 (2003年10月11日)
- 青森県立三沢航空科学館 (2003年10月16日)
- わかくさ・プラザ 学習情報館 (2003年11月2日)
- 若狭湾エネルギー研究センター (2004年4月18日) 会場の面積を考慮して300億分の1
- 国際研究交流大学村 日本科学未来館 (2006年11月25日)
等において、関係各位のご協力の下で上演させて頂きました。
土地のランドマークを利用した具体例は、以下をご覧下さい。
- 旧天文博物館五島プラネタリウム周辺(東京都渋谷区)
- さいたま市宇宙劇場周辺(埼玉県さいたま市大宮区) (協力: さいたま市宇宙劇場)
関連リンク
- 案内役によるスケール計算結果
- 東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター・特別公開日における実践例(2000年11月11日・同センター及び国立天文台三鷹キャンパスにて)