5月31日@科学技術館

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本日の科学ライブショー「ユニバース」は矢治健太郎(国立天文台)が
案内役を務め、ゲストに長谷川雅也さん(高エネルギー加速器研究機構)を
迎えお送りしました。
まず、はじめは今日の星空を紹介しました。星座絵と共に本日の星空を
楽しみました。星座の由来となるギリシャ神話の解説とともに眺める
星空は一味違って見えて素敵でした。また、実際に現在の星空は、火星、
木星、金星が共演していてとてもきれいです。みなさんも、夜空を見上げて
惑星の共演を楽しんでみてはいかがでしょうか?
星空を楽しんだ後は宇宙の世界へ。「太陽系の姿」のコーナーです。人工
衛星ひのでから見るコロナ、国立天文台から観測する黒点など様々な画像を
ご覧いただき、より太陽が身近に感じられました。太陽系の惑星を間近に眺め、
さらに遠い世界へ。天の川銀河を飛び出していきます。銀河の世界のお話です。
迫りくる星々や銀河の世界は幻想的で、宇宙旅行をしている気分になりますね。
迫力満点の銀河や宇宙の映像は、3D上演の醍醐味です。ご覧になりたい方は
シンラドームまで足を運んでみてくださいね。
最後に、「ゲストコーナー」です。長谷川雅也さん(高エネルギー加速器
研究機構)に「宇宙最古の光でビックバン以前の宇宙を探る!」という
テーマでお話しいただきました。宇宙の背景放射というものをご存知ですか?
近年まで宇宙は、ビックバンにより生まれたと言われていました。そんな
宇宙が誕生したと言われる138億光年前の光、つまり、私たち人間の観測
できる地球から最も遠い場所から届く光が宇宙マイクロ波背景放射です。さて、
「言われていた」と過去形で書きましたが、ビッグバンの前にインフレーションが
起こった、という仮説が立っています。これが本日のテーマです。
インフレーションとは、宇宙が一瞬にしてアメーバ位の大きさから銀河の大きさに
まで加速膨張する現象のことを言います。2014年3月、BICEP2(注1)がBモード
偏光(注2, 3)の観測に成功しました。
さて、光が振動する方向は一般に様々です。インフレーションが起こらなかった
場合の宇宙最古の光は様々な方向に振動する光の重ね合せなので、偏光がないと
予想されます。それに対し、インフレーションが生じるとある一定の方向に振動
する光のみが残り、他の様々な方向に振動する光は消えてしまいます。つまり、
「偏光」が生じるのです。具体的には、宇宙マイクロ波背景放射を観測すると
Bモードと呼ばれる渦巻き模様が観測できるのだそうです。BICEP2がBモード
偏光の観測に成功したことにより、インフレーションの存在が仮説として
成り立ちました。しかし、まだまだ検証が必要な段階です。本日のゲストの
長谷川さんが所属するPOLARBEARグループ(注4)も、チリのアタカマ高地の電波
望遠鏡からこの観測を行っています。とても性能のいい望遠鏡を用いることで、
現時点でインフレーション以外に起因するBモード偏光の観測に成功している
そうです。いつか近い将来、インフレーション由来のBモード偏光の観測に
成功する日が楽しみです。宇宙誕生の秘密が解明される日が近いと思うと
わくわくしますね。今後に乞う御期待です!
科学ライブショー「ユニバース」では毎週さまざまなゲストを迎え、科学の
話題をお送りしています。ぜひお越し下さい。
(注1)
BICEP2は宇宙マイクロ波背景放射を観測する専用の望遠鏡。南極点に設置
されている。
(注2)
光は進行方向に垂直な方向に振動する波である。この振動する方向がそろって
いる光を偏光という。
(注3)
光の振動する向きがある点を中心に渦巻き上に分布している状態をBモードという。
(注4)
POLARBEARグループは日本の高エネルギー加速器研究機構をはじめとする、
様々な国の研究所が参加して、宇宙背景放射の偏光観測し、宇宙論の研究を
行なっている。