6月9日@科学技術館

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梅雨空のもと、大勢の方でにぎわう科学技術館で行われた
本日の科学ライブショーユニバースは伊藤哲也(国立天文台)が
務め、主に宇宙のお話をしました。
最初はもし今晩晴れたら見える季節の星座や惑星などを紹介
しました。おとめ座の一等星スピカの横で輝く土星は、ぜひとも
見ていただきたい一押し天体です。
その後、実際に今見ることのできる天体の画像をご紹介しました。
しかし館の外は昼間です。どうやったら星空を見ることができる
でしょうか? 正解は夜の時間帯の場所の人に写真を撮って
もらえばいいのです。科学ライブショー「ユニバース」では、アメリカ
シカゴ郊外にあるヤーキス天文台とインターネットで繋いて
今現在の星空を見ることができます。本日は、土星、子持ち銀河(M51)、
環状星雲(M57)の画像を紹介しました。


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図:土星とその衛星
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図:子持ち銀河(M51)
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図:環状星雲(M57)

「ゲストコーナー」では立教大学の亀田真吾先生にお越し
いただき、「水星は謎だらけ? 日欧共同水星探査計画
ベピコロンボ」と題して、太陽系の惑星である水星に
ついて、お話をしていただきました。
太陽系8惑星の中で水星は最も小さい惑星で、木星や土星の
衛星には水星よりも大きなものもあります。さらに水星は
気温が最高で430℃にもなる天体です。水星には地球の
ように磁場があることがわかっています。地球の磁場に
太陽からの風、太陽風がぶつかるとオーロラが見られます。
一方、水星ではこの太陽風が地面にまで到達し、ごく薄い
大気を生成しているそうです。また、水星は探査機を送り
込むことが極めて難しい惑星としても知られています。
そのような中、NASAが打ち上げたMESSENGER探査機が
2011年3月に水星の周回軌道に到着しました。
MESSENGER探査機による観測で水星の南極や北極にある
クレーターの内側の常に日の当らない場所に、氷が残って
いる可能性があることが分かりました。また、水星の磁場が
水星の中心からずれて存在していることも確認されました。
しかし、MESSENGER探査機に搭載されている機器では
調べらないこともあります。亀田先生はハワイ・マウイ島の
ハレアカラ山にある望遠鏡でも水星の観測を行っています。
これまでは、太陽風の強さによって生成される水星大気の
量も変化すると思われていましたが、最近行なわれた
観測では大気の変動は太陽風の変動とあまり関係が無さそうに
見えているため、引き続き調査が続けられています。水星には
まだまだ謎が詰まっているのです。これらの謎を解明すべく、
2015年にはヨーロッパと日本の共同計画であるベピコロンボ
計画の探査機が打ち上げられます。この計画では両国で
それぞれ開発が進められている2機の探査機を組み合わせ
ロケットで打ち上げます。一緒に水星付近まで行ったのちに
分離し、それぞれ別の水星周回軌道に入って2機で観測する
予定です。軌道も観測目的も異なりますが、この2機の
データを組み合わせることで新たな事実がわかってくる
はずです。水星に到達するのは2022年の予定で、沢山の
謎を解くための長い旅はこれから始まろうとしています。
「ユニバース」では毎週さまざまな分野の案内役とゲストで
上演しております。これから梅雨に入り雨の日が続きますが、
ぜひお越しください。